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IoT 技術コラム

2025 年 03 月 06 日

Matter 製品の開発に求められる認定プロセスとは

~スマートホームの共通規格「Matter」の利点と認証の必要性~

スマートフォンやネットワークデバイスを利用してデバイスや家電を遠隔地から制御でき、日々の暮らしを便利で楽しくしてくれるスマートホームは、スピーカーや照明機器をはじめとして、さまざまな生活家電に広がっています。IoT や AI を活用したスマートホームは、家電や住宅設備へと普及していくことで、外出先から自宅のスマート家電を制御して、生活をより豊かにしてくれます。世界のスマートホーム市場規模は、Fortune Business Insights の調査によると 2023 年には 31,010 億 7 千万米ドルと評価され、2024 年の 1,215 億 9 千万米ドルから 2032 年までに 6,332 億米ドルに成長すると予測されています。(出典 : Fortune Business Insights

 スマート家電冷蔵庫の写真

その一方で、Amazon、Google、Apple などのプラットフォーマーは独自の規格を策定しているため互換性に乏しく、スマートホーム機器を開発するメーカーは、複数の規格に対応した製品を開発する必要がありました。こうした課題を解決するために、Amazon、Google、Apple などのグローバル企業が参加する CSA(Connectivity Standards Alliance:無線通信規格標準化団体)によって、業界統一の通信プロトコル「Matter」規格が策定されました。Matter プロトコルを使用すると、各社のスマートホーム規格の違いに対応することなく相互に互換性のあるデバイスを開発できます。

Matter の特徴と利点

Matter は、IP ベースのアプリケーションプロトコルです。規格の策定には、Apple、Google、Amazon なども参加している CSA が主導し、2022 年 10 月に Ver.1.0 が発表されました。2023 年 10 月には、Ver.1.2 が発表されています。Matter は、OSI(Open Systems Interconnection)モデルのアプリケーション層に実装され、その特徴として、通信プロトコルに Wi-Fi と Thread を利用し、Bluetooth はコミッショニング時のみで使用します。Matter を採用することにより、既存プロトコルの限界を解消しさまざまなメーカーのデバイスが使用可能になります。

Matter は、OSI(Open Systems Interconnection)モデルのアプリケーション層に実装れることをあらわした図

出典: ルネサス エレクトロニクス株式会社 「Matter」

Matter 対応のスマートホーム製品開発に必要な手続きと認証

標準的な Matter ネットワークへの接続手順は、以下のようになります。

 標準的な Matter ネットワークへの接続手順をあらわした図

出典:【解説】スマートホーム共通規格「Matter」(リョーサン テクラボ)

Matter 認証

  • CSA 会員登録
  • 認証テスターの選定
  • 認証テスターから受け取った試験結果を CSA に申請

通信プロトコルの認証

  • Wi-Fi
  • Thread
  • Bluetooth

CSA の Matter 認定を整理すると次のようになります。

  • 有効期間:
    発行された認証は、製品の耐用年数が経過するまで有効であり、CSA の認定製品データベースに掲載される資格が直ちに得られます。
  • 必要条件:
    認定は、CSA のメンバーが利用できます。
    すべての新規製品認証では、CSA 認定テストプロバイダーで製品テストを行い、その後、CSA の認証ツールで申請する必要があります。
  • コスト:
    製品認証に関連する主な費用は、試験料と申請料です。テスト料金の見積もりについては、認定テストプロバイダーにより異なります。
  • タイムライン:
    認定プロセスの合計期間は、選択したテストプロバイダーがテストに必要とする時間の長さや、アプリケーションレビュー中に特定された特定の項目など、いくつかの要因によって異なります。

CSA 会員は、Promoter、Participant、Adopter、Associate に区分され、それぞれのステータスや開発評価に必要な認証は、以下のようになります。

Promoter、Participant、Adopter、Associate を説明した表

出典: スマートホームをより便利に!共通規格「Matter」とは?(リョーサン テクラボ)

Alliance Certification Transfer Program (CTP)

認定製品のアライアンスエコシステムに参加するためのプログラムのひとつです。このプログラムにより、Participant、Promoter のメンバーは、認定製品の認定ステータスを維持しながら、リブランディング/ホワイトラベルを目的として顧客に認定製品を提供できるようになります。

Participants/Promoter

認定製品を顧客に提供し、顧客がその製品を自社の名前で再認定できるようになります。
完全なテストおよび類似性による認証によって認証された製品は、プログラムの対象となります。
また、認定資格の譲渡を受ける資格もあります。

Adopters/Associates

Participants と Promoter の企業から製品に基づく認定の移転を受け取り、その製品を自分の会社名で再認定する資格があります。
承認された製品には、Adopter or Associate の会社名の下に、その規格に対する Connectivity Standards Alliance の認定ロゴが表示される場合があります。

Matter 対応の製品開発においては、CSA Alliance Membership への参加が必須となります。会員になると、Vender ID の申請が可能になります。そして、開発している製品を認定テストプロバイダーと一緒にテストします。テストに合格すると、CSA にレポートされます。その後、ツールを利用して申請書を作成して提出すると、最終承認後に Product ID と Certificate Declaration が付与されます。さらに、製品認証のために DAC(デバイス証明書) を発行し、デバイスに書き込みます。DAC には、VID(ベンダー毎)の PAI(認証局)の構築が必要になり、1 台 1 台に異なる鍵をもつ証明書を埋め込む必要があります。以上の要素を整理すると、認証を含めた 4 つの取り組みが必須となります。

atter 対応の製品開発の流れを説明した図

Matter 対応製品は、操作がシンプルで、相互接続性があり、高い信頼性と安全性という 4 つの特徴があります。この 4 つの特徴の中で、安全性を高めるために機器の認証が必須となっています。

特徴 説明
Simplicity シンプル。簡単。複雑な操作なしに利用ができる。
Interoperability 相互接続性。異なるメーカーの IoT デバイスの接続が可能。
Reliability 信頼性。インターネット接続なくローカルでも利用できる。Wi-Fi や Thread などの接続性。
Security 安全性。デバイスのサプライチェーン管理、機器の認証、暗号化対応。

電子証明書を利用したセキュリティの向上

次回は、Matter 製品開発を実践するメーカーが、どのような機器認証を実践すればいいのか、について解説します。

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