2019 年 10 月 23 日
組込み Linux 選択のポイント ~第 2 回:組込み OS の比較と選択~
<連載で解説> 組込み OS 選択の注意点とは?
スマートデバイスや IoT※の普及に伴い、「組込み機器」の需要は大幅に増えています。以前は特殊な領域であった「組込み機器」ですが、最近では要求がより高度化していること、インターネットへの接続の要件が高まっていること、ハードウェアの性能が著しく向上したこと、などから、サイズは小さくても中身は PC やサーバーなどに近づいています。これにより、組込みシステムの開発において「組込み OS」に求められる要件も、以前とは異なって来ています。
この記事では、近年組込み OS として急速にシェアを拡大している「組込み Linux」について、他の組込み OS との違いやメリット、採用時の注意点などを全 4 回の連載で解説します。
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- IoT とは:"Internet of Things"の略。従来のコンピュータ以外に、様々な「もの」がインターネットに接続され、相互に通信を行いながら動作すること。
インターネット接続などが簡単に行える、汎用 OS
前回の記事(リアルタイム OS から Linux へ)でお話ししたように、従来はリアルタイム OS が主流だった組込み OS の世界において、ハードウェアの性能向上やインターネット接続のニーズなどを背景に、汎用 OS が利用されるケースが多くなっています。今回は、いくつかの汎用 OS についてご紹介していきます。
POS レジなどで利用される、Windows CE (Windows Embedded Compact)
マイクロソフト社が開発している組込み OS としてWindows CE があります。
Windows CE は、パーソナルコンピュータ(PC)用 Windows と異なり、OS のみで一般に販売されることはなく、対象となる装置に組込んで使用することを前提としています。
組込み OS という性格上、機器を開発するメーカーがその機器に不要な機能は削除し必要な機能のみを選んで搭載することができます。業務用専用端末や、セットトップボックスなどで用いる場合は、このようにして必要な機能を搭載します。また、実装した機能によって対価のロイヤリティ(使用料)が変動します。
必要な機能のみを選択して搭載することができるという特徴を生かして、Windows CE を搭載する POS レジや、ビデオプロジェクタ、カーナビ、ゲーム機、ポータブル AV プレーヤーなども存在します。しかし、ライセンスロイヤリティ(使用料)は高めのようです。
Windows CE は、主に POS レジなどのハイスペックなハードウェアに使われています。最近では、Windows CE から後述する組込み Linux へ移行するケースも増えているようです。
プロトタイプの開発に最適な Android
スマートフォンでお馴染みの Android も組込み OS です。
Android には、CTS(Compatibility Test Suite)というものがあります。
これは、Google 社が Android Platform 採用端末に実施を義務付けているテスト群であり、これをクリアしないと Android と謳えなかったり、Google Play に接続できないなどの制約があります。場合によっては、Google 社と協議する必要性が出てくる可能性もあるかもしれません。
Android は、Linux の上に Java を乗せて動かしている OS であるため、後述する Linux だけの組込み OS よりは動作が重く、リアルタイム性を重視する企業からすると、場合によっては扱いにくい OS であると評価されている場合もあります。
しかし一方、開発が容易、ツールやアプリケーションが充実しているなどのメリットがあるため、プロトタイプなどを作る場合には、便利な OS です。
IoT 時代の組込み OS の本命、Linux
組込み OS としての Linux は、「組込み Linux」と呼ばれています。
前述のように、以前はハードウェアの制約によってリアルタイム OS を使用する必要がありましたが、現在では組込み Linux でもマイクロ秒(100 万分の 1 秒)オーダーのデバイスのハンドリングができるようになっています。現在では組込み Linux はすでに情報家電や車載機器などに多く採用されています。
組込み Linux は、オープンソースであり低コストで導入できることや、最新のネットワークプロトコルに容易に追随できることなど、汎用 OS としての成長を続けていることなどから、今後も多くの組込み機器に搭載されていくことが予想されます。特に IoT 分野では組込み Linux が主流となっていくでしょう。また、従来はリアルタイム OS を使用していた企業が組込み Linux に移行するケースも増えています。
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