採用情報 お問い合わせ

BLOG

OSS セキュリティ BLOG

OSS セキュリティ BLOG

2026 年 02 月 26 日

OpenJDK のサポート終了(EOL)にどう向き合うか:セキュリティリスクの回避とビジネス継続性の両立

1. はじめに:Java エコシステムが抱える EOL 後の課題とジレンマ

現在の Java 市場は、Java 11 から Java 17 や 21 といった新しい長期サポート(LTS)版への移行期にあります。しかし、エクリプス財団が世界中の Java 開発者を対象に毎年実施する、大規模な意識調査「Jakarta EE Developer Survey 2025」のデータによれば、企業の約 37% が依然として Java 11 を使い続けています。これは単なる移行の遅れではなく、システムの安定性を最優先した結果です。
特にエンタープライズ領域において、Java 11 からの刷新が停滞する最大の要因は、Jakarta EE 9以降で導入された Namespace 変更(javax から jakarta へ)にあります。javax から jakarta へのパッケージ名変更を伴う改修や移行は、コード修正や関連ライブラリノーバージョンアップなどの作業が必要になり、対応コストが膨らみがちです。

Java で Web アプリケーションを開発するためのフレームワーク

多くの企業は今、「更新コストの増大」と「EOL による安全性の喪失」というジレンマに直面しています。この課題を解決するためには、OpenJDK のサポート終了が技術的に何を意味するのかを再定義する必要があります。今回は OpenJDK の特徴と注意点を整理しながら、サイバー攻撃のリスクを最小限にするセキュリティ対策について解説します。

2. OpenJDK とは何か:なぜ「公式終了」が攻撃者の好機となるのか

OpenJDK は 、Java SE のオープンソース実装であり、多くの組織の基幹システムが Java を採用しています。その透明性は、開発における大きなメリットである一方、公式サポートが終了した瞬間に「攻撃者にとっての設計図」へと変貌するリスクも抱えています。

「既知の脆弱性(N-day)」とライブラリエコシステムのリスク

公式サポート終了後の環境には、新たな脆弱性が発見されても修正パッチが提供されません。攻撃者は公開されている OpenJDK のソースコードや最新版の修正差分を分析し、古い環境に残された「修正されない穴」を狙います。これが既知の脆弱性を悪用する「N-day 攻撃」のメカニズムです。
また、リスクは OpenJDK 本体に留まりません。Java エコシステムを構成する周辺ライブラリもまた、攻撃の標的となります。

  1. Spring Framework / Spring Boot
  2. Apache Tomcat
  3. Hibernate
  4. Jackson (FasterXML)

最近のインシデントでは、従業員の PC 感染を足掛かりに、修正パッチが適用されていないこれらのサーバーサイド OSS の脆弱性を突き、ランサムウェア感染やデータ漏洩を引き起こすケースが増えています。コミュニティの保護を失ったシステムは、攻撃者にとって極めて効率的なターゲットとなります。

3. 脆弱性対策がもたらす 3 つの価値転換

OpenJDK の EOL 対策を適切に講じることは、単なる保守作業ではありません。「守り」のコストとしてではなく「攻め」の投資と捉え直し、新たなビジネス価値へと転換する戦略は、現代の IT 投資において非常に重要です。

① VEX の活用により真に対応すべきリスクを優先した効率的・確実なセキュリティレベル向上

脆弱性管理において、報告されるすべての CVE(共通脆弱性識別子) に対応することは現実的ではありません。ここで重要になるのが VEX(Vulnerability Exploitability eXchange) です。 VEX は、SBOM(Software Bill of Materials)と一緒に用いられる、対応の優先順位を判断するためのもので、特定の脆弱性が自社製品や環境において「実際に悪用可能か(Exploitable)」を機械可読な形式で示すものです。これにより、不要な偽陽性を排除し、真に対応すべきリスクにのみ優先順位を付けることが可能になります。DevSecOps チームを脆弱性通知の疲弊から解放し、セキュリティレベルを効率的かつ確実に向上させることができます。
SBOM と VDR、VEX について|BLOG| サイバートラスト

② 経営・コンプライアンス体制の高度化

前述の Namespace 変更を伴う大規模な改修や移行を回避しつつ、法規制や社内ポリシーへの準拠を継続できることは、経営上の大きなベネフィットです。欧州サイバーレジリエンス法への適合を維持することは、グローバルビジネスを継続するための必須条件となります。

③ 業務効率化とリソースの最適化

大規模バージョンアップに伴う大規模な動作検証の負担を軽減することで、エンジニアリングリソースを保守から新機能開発やイノベーションへと再配置できます。既存環境の挙動を変えずに安全性を担保する手法は、IT 投資を最適化する最も合理的な選択肢となります。

4. TuxCare ELS:既存環境を変えずに安全性を延長する選択肢

サイバートラストが提供する「TuxCare ELS」は、既存のシステム構成やソースコードを一切変更せずに、EOL 後の OSS にセキュリティパッチを適用できる解決策です。

技術的ベネフィット:容易な統合とパッチ適用

TuxCare ELS は、Maven や Gradle といった Java プロジェクトで利用される標準的なビルドツールとシームレスに統合できます。

  • リポジトリ設定の統合: settings.xml の <servers> セクションに認証情報を、pom.xml の <repositories> に本サービス専用のリポジトリサーバーの URL を追加するだけで、信頼された修正済バイナリの取得が可能になります。
  • Spring Boot ユーザーへの利点: Maven プロジェクトにおいて、<parent> タグのバージョンを 2.7.18-tuxcare.8 のように TuxCare メンテナンス版に書き換えるだけで、依存する推移的ライブラリ(Transitive Dependencies)も含めて一括で修正パッチが適用されます。
  • OS に依存しない保護: OS 本体のサポート期間に関わらず、OpenJDK や Tomcat 等の個別スタックに対して CVE 修正パッチが提供されます。パッチ適用済みのライブラリには -tuxcare.x や .post1+tuxcare といった明確なサフィックスが付与され、管理の透明性が確保されます。

この手法により、大規模なコード改修を行うことなく、脆弱性の穴だけを塞ぐ低コスト・低リスクな運用が実現します。

5. 持続可能な OSS 活用に向けて:次に取るべきステップ

OpenJDK のサポート終了への対応は、単なるパッチ適用の問題ではなく、不確実なビジネス環境におけるレジリエンス(回復力)の確保そのものです。持続可能な OSS 活用のために、以下のステップを優先的に実施することを推奨します。

  1. 現状の Java バージョンとライブラリの棚卸し: どのバージョンの Java と周辺ライブラリ(Spring, Tomcat 等)が稼働しているかを正確に把握します。
  2. SBOM による依存関係の可視化:SBOMを整備し、コンポーネントごとの脆弱性リスクを統合管理できる体制を整えます。
  3. 延長サポートの検討と VEX の導入: 移行困難なシステムに対し、TuxCare ELS のような商用延長サポートを導入し、VEXを活用した効率的な脆弱性管理へと移行します。

大規模な改修や移行に伴うリスクや膨大な工数を前に、判断に迷うことは珍しくありません。既存の資産を最大限に活用しながら、継続的な脆弱性対応を行うアプローチは、「更新コストの増大」と「EOL による安全性の喪失」というジレンマを解消し、次の一手へ繋げる現実的かつ戦略的な選択肢と言えるでしょう。

関連する製品・サービス
CentOS 7 延長サポートサービス
デジタルトランスフォーメーションのための電子認証基盤 iTrust
iTrust SSL/TLS サーバー証明書