標準企業コード登録管理システム電子化で企業の真正性を示す手段に電子署名クラウドサービス iTrust を採用
事例企業: 一般財団法人日本情報経済社会推進協会
事例カテゴリ:業務効率化
目的: 登録作業を電子化するにあたり内容の真正性を示す新たな手段が必要に
導入前の課題
JIPDEC では、EDI(Electronic Data Interchange=電子データ交換)を利用する際などに企業を特定する「標準企業コード」を提供。電子・電機、建設、鉄鋼、物流業を中心に約 3 万 2000 件の法人・個人事業主が利用している。これまで請求書などは紙で発行していた。デジタル化のリプレースを考えた際、書類に社判を押すことで担保していた、「間違いなくその企業である」という証明を電子版でどう実現すれば良いのか、新たな仕組みを導入する必要があった。
導入の目的・解決手段
デジタル化にはクラウド ERP システム導入により電子申請が可能となった。さらなる安全性のため、デジタル化した標準企業コードの請求書などについて、発行元の真正性を証明するため、クラウド環境でも利用可能な電子署名用証明書である「iTrust 電子署名用証明書」を導入した。デジタル化された請求書となっても、iTrust によって紙媒体と同様に真正性と改ざんされていないことを証明しながら、これまで以上に事業者様に使いやすいサービスとすることを目指した。
導入効果
サービスを電子化した結果、事業者の 98%が電子申請に移行した。電子申請は Web 上で手続きが可能なため、会社に行って郵便で書類を受け取る必要がない。コロナ禍もあり、テレワークを行っている企業からは好評となっている。また、以前は請求書を紛失などにより再発行していた。電子版では、企業ごとに自社の請求書や企業コードを確認でき自分でいつでもダウンロードできるマイページを提供するなど、事業者にとって利便性の高いサービスを信頼性を担保しながら提供できるようになった。
JIPDEC が担うデジタル化推進
プライバシーマーク制度の運営や、情報マネジメントシステムの普及啓発などさまざまな活動を行う一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)は、半世紀にわたり日本の情報化の一翼を担ってきました。デジタル庁が発足し、デジタル化推進に拍車がかかっている現在、データ流通や利活用に向けて関係省庁や日本国内外の関連団体と連携して、社会から信頼された中でのデジタル化進展に寄与する組織であることを目指しています。
2021 年 6 月 21 日より、標準企業コードの新規登録、更新、内容変更など各種手続きについて、事業者様からの申請から登録完了までの手続きをデジタル化しています。
1 企業に 1 つの標準企業コードの発行申請管理に求められる厳重なチェック
JIPDEC が提供する「標準企業コード」は、1 企業に 1 つ、6 桁の企業コード番号を付与し、企業間電子商取引などにおいて企業を特定するために利用されています。
標準企業コードが導入される以前は、それぞれの企業が独自に取引先にコードを振ることが多く、「取引先ごとに異なるコードが振られるため、取引の際に混乱する」、「コードの発番が面倒」といった声があがっていました。標準コードを利用すれば、コードを振る手間がなくなる上、取引先を特定することが可能になります。
「EDI における混乱をなくすために提供しているのが標準企業コードです。基本的に標準企業コードは 1 企業に 1 つです。1 つの企業が複数のコードを利用していれば混乱が起きます。そうした混乱を回避するために番号の発行から運用までを行うのが我々の役割となります」と JIPDEC デジタルトラスト評価センターで標準企業コード事業を担当する冨永優子氏は説明します。
安全で利便性の高い電子取引を行うために提供する標準企業コードだけに、JIPDEC 側では 1 つの企業が複数の申請を行うことがないようチェックし、さらに申請を行った企業がなりすましなどではないようチェックを行ってきました。
「申請を行った企業の別部署から申請が行われるといったケースもあるため、1 企業が 1 つのコードであることを守っていくためにチェック作業は欠かせません。また、なりすましといったことが起こらないよう、申請があった場合には内容を精査した上で標準企業コードを発番、登録証および請求書を郵送し、企業の実在を確認してきました」
システムのクラウド化に伴い、電子証明書を使って企業の真正性を証明する仕組みを構築
2019 年、システムをオンプレミスからクラウドへ切り替えることが決定。システムをクラウド化するだけでなく、電子署名を利用した企業の真正性を証明する仕組みを導入することになりました。JIPDEC は、電子証明書を発行する認証局、電子契約サービスで使用するリモート署名サービスなどの信頼性を評価するトラストサービス評価事業を行っています。標準企業コード事業においても、電子証明書を使って請求書や登録証の発行元の証明を行い、全てをデジタル化した仕組みとすることが決定しました。
新システムとなったクラウド ERP システムでは、マイページを提供し、企業が登録した書類、登録料などの請求書を確認できるようにすることで旧システムよりも利便性が格段に向上したものとなりました。同時に、インターネット上の情報の信頼性確保に取り組む JIPDEC としては、企業の真正性を証明する作業についても、紙の時代と同様に明確な仕組みを追加したいと考えました。
「電子署名に知見がある職員からのアドバイスにより、複数のサービスをテストし比較検討しました。JIPDEC は電子契約を普及・啓発していく役割も担っています。それだけに真正性をきちんと担保できる電子署名サービスを選択しなければなりませんでした」
候補に挙がったサービスの中で、サイバートラストの「iTrust」が評価されたのは、クラウド上で署名可能なことだけでなく、PDF ビューワーでエラーなく検証できることでした。JIPDEC の要望に合致していたことから、iTrust の導入が決まりました。
オンラインで登録作業を完結できるデジタルサービスの利便性と電子署名用証明書の信頼性を評価
2021 年 6 月、デジタル化のサービスが始まりました。
新しいサービスでは、事業者側は標準企業コードの新規登録、登録内容の更新、変更といった各種手続きをデジタル上で登録完了させることができる。サービスを開始すると、98% の事業者がデジタルサービスを選択しました。
「テレワークを実施する企業が多いコロナ禍にサービスが始まったこともあり、オフィスに行くことなく登録作業を完結できるデジタルサービスの利便性を評価した事業者様が多かったことも、デジタルサービスを選択する比率が高い要因となりました」(冨永氏)
特に利用企業から好評なのが、マイページを見れば自社のコードを確認できる点と言います。以前は自社のコードがわからなくなったとの問い合わせや、請求書を再発行して欲しいという依頼がありました。マイページを見ればコードも確認でき、請求書もダウンロードすることができます。「デジタル化によってこれらが確認できることは、事業者様にとっても、JIPDEC 側にとっても、メリットが大きいといえます」(冨永氏)
信頼性についても、ポリシーに則り、本人性を審査した上で発行する法人向け証明書を提供する、iTrust 電子署名用証明書で電子署名された PDF は、Adobe Acrobat、Acrobat Reader などで「有効な電子署名」として視覚的に確認できるのはもちろん、JIPDEC が発行した電子文書に対して発行元の組織の正当性を示すことができます。
電子署名のさらなる活用で今後のペーパーレス化推進にも期待
冨永氏は、「今後さらにペーパーレス化が進んでいくことになります。ペーパーレス化を進めていく際には、真正性を担保することは重要な要素となります。今回のサービスで電子署名を導入したことは、我々の他の部署のサービスにおいても広げていく必要性があるという声があがっています」と説明します。
特に今後は契約書を電子化していく場面が増加することが想定されます。その際、これまでは印紙、印鑑、印鑑証明といった紙で行っていた真正性を電子契約でどう証明するのかが問われることになります。
「先ほどお話ししたように、JIPDEC は電子契約の真正性を普及、啓発していく役割を担っています。それだけに PDF 文書で信頼性がある電子署名を行うための仕組みを選択しなければなりません」
iTrust の信頼性の高さが、さらに多くの電子契約で利用されていく要因となっていきそうです。
導入企業様のご紹介
一般財団法人日本情報経済社会推進協会(略称=JIPDEC)は 1967 年に設立し、わが国の情報化推進の一翼を担い、技術的・制度的課題の解決に向けた活動を展開しています。安心安全な情報利活用環境の構築を図るため、プライバシーマーク制度の運営や、電子証明書を発行する認証局等の信頼性を評価する評価事業などを行っています。 https://www.jipdec.or.jp/