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Linux の知識・学習 BLOG

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2025 年 03 月 14 日

AlmaLinux Kitten 10 をインストールしてみた

概要

本記事では、2024 年 10 月に発表された AlmaLinux Kitten 10 のインストール手順と、実際に手のひらサイズの小型 PC「GoWin R86S」にインストールしてみた際の体験を紹介します。特に、AVX 命令に非対応のプロセッサを使用した場合の注意点や、x86_64_v2 アーキテクチャのサポートについても触れています。これから AlmaLinux Kitten を試してみたい方や、インストールに関心のある方にとって有益な情報を提供します。

AlmaLinux Kitten とは

2024 年 10 月、AlmaLinux OS Foundation は AlmaLinux Kitten を発表しました。AlmaLinux Kitten とは次の AlmaLinux のメジャーバージョンをリリースするための開発版で、日々パッケージをビルドすることでバグを早期に検出したり、正式版の AlmaLinux のリリースを早期にリリースできるような環境を整えることを目的としています。Kitten は子猫を意味する英単語で、AlmaLinux はコードネームにネコ科の動物の名前を使用していることから次の猫が育つ前の版という位置づけで開発版には「子猫」という名前を与えています。
本記事では、実際に AlmaLinux Kitten 10 を実機にインストールしてみてつまずいた点などを紹介します。

インストール先のハードウェア

今回はたまたま手元にあった手のひらサイズ小型 PC の GoWin R86S にインストールしてみます。R86S は充実したネットワークインターフェースが魅力の小型 PC です。複数のネットワークポートを持ち、2.5GbE/10GbE 対応ということもあり、ネットワーク用途で人気が高い製品です。 メーカーの Web サイト でも、Firewall Router、Networks Appliances という記述が見られます。

使用したのは R86S-T2 という SFP+(10GbE) ポートなし、無線 (Wi-Fi/Bluetooth) なしの USB Type-C 給電モデルのメモリ 16GB 版です。大きさは Raspberry Pi よりひとまわり大きいくらいです。

GoWin

USB メモリから USB 接続の M.2 SSD にインストールします。R86S は M.2 SSD を内蔵できるのですが、今回は検証用途で一時的なインストールのため、取り付け外しの手間の観点から外付けの SSD にインストールします。

R86S-T2 に外付けの SSD を接続した写真

イメージの取得

AlmaLinux Kitten 10 をインストールするための、まずは ISO イメージをダウンロードします。

執筆時点では、20241227 が最新の ISO イメージでしたので

をダウンロードしました。Kitten の ISO イメージは 3 ヶ月ごとにアップデートされています。

ISO イメージのファイル名には dvd という文字が含まれていますが、USB メモリに書き込んで起動することができるので USB メモリに書き込みます。約 6.7GB あるので、8GB または 16GB の容量があると安心です。(※コマンドは実際の環境に合わせて適宜読み替えてください)

dd if=./AlmaLinux-Kitten-10-20241227.0-x86_64-dvd.iso of=/dev/sda bs=1M

起動しない原因の調査

ISO イメージを書き込んだ USB メモリを差し込み、起動させてみますが真っ黒な画面のまま起動しませんでした。切り分けのため、試しに AlmaLinux 9.5 の ISO イメージ を書き込み起動させてみると、以下のような警告が起動中に表示されました。

 警告画面

今回使用した R86S の CPU が Celeron N5105 で、AVX 命令をサポートしていないため x86_64 マイクロアーキテクチャレベルとしては x86_64_v2 にあたり、将来のバージョンではサポートされなくなるという内容です。将来のバージョンというのが 10 のことですね。

注 : x86_64 のマイクロアーキテクチャレベルの表現には x86-64-v2, x86_64-v2, v86_64_v2 といった表記揺れが見られますが、本記事では AlmaLinux が内部で使用しているアンダースコア区切りの表記に合わせます(引用文を除く)。

CentOS Stream 10 や Red Hat Enterprise Linux 10 では x86_64_v3 を前提にしているため、サポート外の CPU ということで起動しなかったようです。

RHEL9 では x86_64-v2 マイクロアーキテクチャが前提ですが、RHEL10 ではそれをもう一段進めて、x86_64-v3 マイクロアーキテクチャを前提とすることになりました。もちろん、CentOS Stream 10 も x86_64-v3 マイクロアーキテクチャを前提にビルドされています。詳しくはこちらをご覧ください。2013 年ごろ以降発表 (Intel なら Haswell 世代以降 ) の CPU を採用したマシンであれば、条件を満たします。

( 赤帽エンジニアブログ より )

x86_64_v3 は 2013 年発売の第 4 世代 Core シリーズ (Haswell) 以降の CPU であれば基本的に該当するので、よほど古いハードウェアでなければ気にする必要がないと思っていましたが、2021 年発売のプロセッサあっても Atom 系アーキテクチャ (Jasper Lake) をベースとする Celeron や Pentium といった廉価版の CPU には AVX 命令が省略されており x86_64_v2 に相当するものがあるのは盲点でした。

CentOS Stream 10 や RHEL 10 では x86_64_v3 以降の CPU しかサポートしていませんが、AlmaLinux Kitten 10 では x86_64_v2 も引き続きサポートしているため、x86_64_v2 版 ISO をダウンロードし、再チャレンジします。

注 : 少しわかりにくいですが、AlmaLinux (Kitten) 10 における x86_64 は CentOS Ctream 10 / RHEL 10 でデフォルトとなった x86_64_v3 のことを意味します。このため、x86_64 と x86_64_v2 であれば前者が新しいマイクロアーキテクチャに対応します。通常は x86_64 の方を選んでおけば問題ありません。x86_64_v2 は v86_64 が動作しない場合にのみご利用ください。

インストール

x86_64_v2 版の ISO イメージを書き込んだ USB メモリを使うと、無事に起動しインストールできました。今回はほとんどデフォルトのまま、Server with GUI をインストールしましたので、途中は省略します。

 インストーラーの起動画面

 インストール概要の画面

 インストールの進捗状況の画面

インストール完了&再起動

インストールが完了したので、再起動して AlmaLinux Kitten を起動します。起動画面はメーカー ( 製品 ) のロゴと AlmaLinux のロゴが合わさった今どきな感じの画面になっています。

 起動画面

無事に AlmaLinux Kitten 10 が起動したのでシステム詳細画面を表示させてみました。ハードウェアの型式も正しく表示されていますね。一部未翻訳の部分がありますが、このあたりは正式版のリリースまでに改善する予定です。

 システム詳細画面

EPEL について

AlmaLinux Kitten 10 および AlmaLinux 10 では、x86_64_v2 アーキテクチャを引き続きサポートしていますが、EPEL (Extra Packages for Enterprise Linux) については RHEL が x86_64_v3 以降のみサポートすることから x86_64_v3 アーキテクチャを前提にビルドされる方針ですので、x86_64_v2 にしか対応しないハードウェアでは 10 以降 EPEL が利用できなくなってしまいます。

これに対応するため、AlmaLinux コミュニティでは EPEL で提供されているパッケージを独自に x86_64_v2 をターゲットにリビルドして提供することが計画されています。

このような話し合いは、ALESCo (AlmaLinux Engineering Steering Committee) でオープンに行われています。チャットでのやり取りの他に、隔週でのミーティングが開催されており誰でも参加できますので興味があれば参加してみてください。ミーティングのスケジュールは events.almalinux.org で公開されています。執筆時点では、日本時間で水曜日の 23 時からとなっています。

おわりに

AlmaLinux 10 の開発版である AlmaLinux Kitten 10 を小型 PC にインストールしてみましたが、今回使用した PC はプロセッサが AVX 命令に非対応のため x86_64_v2 アーキテクチャ用のイメージを使用する必要がありました。

小型 PC や産業用 PC の一部では AVX 命令をサポートしないプロセッサが使用された製品が引き続き現役で販売されています。2025Q2 リリース予定の AlmaLinux 10 では x86_64_v2 を引き続きサポートしますので、このような製品でも引き続き利用可能です。

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