2021 年 03 月 23 日
第6回:どうやってデータバックアップするの?
『みら子先輩と学ぶ、バックアップはじめの一歩』
連載『みら子先輩と学ぶ、バックアップはじめの一歩』は、企業のシステムを守るバックアップについて、みなさんと一緒に学んでいく特集です。登場人物は、入ったばかりの新入社員くるり君とベテランエンジニアのみら子さんです。
「バックアップってなに?」という簡単な疑問からはじまった本連載の第 6 回目は、「どうやってデータバックアップするの?」です。
登場人物
みら子
ベテランエンジニア
くるり
入社したばかりの新入社員
第 6 回:どうやってデータバックアップするの?
くるり:
みら子先輩、前回は、システムバックアップの方法と、仮想化環境のシステムバックアップでの注意点についてのレクチャー、ありがとうございました。
今日はどうやってデータバックアップするかについても、教えてください!
みら子:
わかったわ。データバックアップね。まず、データバックアップって、どういうことか覚えてる?
くるり:
はい。プレゼンテーション資料や売上管理ファイルなどの毎日作成されたり、アップデートされたりするデータをバックアップすることですよね。
みら子:
なかなか、よく覚えているわね。そのとおりよ。ファイル形式で保存されているものもあれば、データベースに保存されているものもあるので、そこをまず覚えておいてね。
くるり:
はい!
バックアップソフトウェアを使う方法
みら子:
まず、一番わかりやすい方法は、バックアップソフトウェアを使う場合ね。分かりやすい方法ということと、それが最適かどうかは違うので、そこは注意してね。
くるり:
わかりました。バックアップソフトというと、Symantec Backup Exec のような商用ソフトウェアですか?
みら子:
そのとおり。シマンテック社以外にも、デル・ソフトウェア、IBM、ヒューレット・パッカードなど多くのメーカーからデータバックアップの商用ソフトウェアが出されているわね。それ以外にも、最近注目が高まっているのは、オープンソースのデータバックアップソフトウェアね。例えば、Bacula なんかね。
くるり:
それらのソフトウェアを使って、どうやってバックアップするのですか?
みら子:
各社ともにアーキテクチャーが違うので、一概に言えないけれど、たいてい、バックアップをコントロールするバックアップサーバがあるの。そして、そのサーバから、バックアップしたいサーバを管理して、バックアップするわ。
くるり:
バックアップデータの保存先はどうするのですか?
みら子:
テープやファイルサーバ、バックアップ専用アプライアンスなど選択肢があるわ。クラウド上にバックアップできるものもあるわね。
くるり:
システムバックアップだと、指定したディスクをまるっとバックアップしましたけど、データバックアップはどうですか?
みら子:
バックアップしたいディレクトリを指定するのは同じよ。たいてい、バックアップする対象のサーバには、エージェントがインストールされていて、バックアップしたいディレクトリにあるデータが作成、修正されたりすると、エージェントがそれらの情報をバックアップサーバに伝えて、バックアップする対象を決めるようにするの。
くるり:
あ!そこで、差分バックアップとか、増分バックアップとかって、関係してくるのですね?
みら子:
そう!そのとおり。復習もしっかりしているわね。バックアップソフトウェアでは、どのような方針でバックアップするかということを管理画面で指定できることが多いのよ。
データベースソフトウェアの機能を使う方法
くるり:
わかりました。さっき話に出たデータベースに保存されたデータはどうですか?
みら子:
バックアップソフトウェアでもデータベースのバックアップは取得できるんだけど、データベースソフトウェアが持っているバックアップ機能で取得することも多いわね。
くるり:
オプション製品か、何かですか?
みら子:
それもあるけど、まずは、データベースの標準機能を使う方法かな。標準機能を使う場合は、データベースの基本機能だから、普通は無償で使えるの。たいていは、コマンドラインだけでバックアップ作業を設定するような感じ。あと、オプション製品は高度なバックアップ機能を提供していることも多いのよ。管理画面を使って、使いやすさとか、詳細な設定ができたり、性能が基本機能より高速だったり、とか何かしらのメリットを持っているわね。
くるり:
例えば、どういう製品ですか?
みら子:
MySQL だと、標準機能で mysqldump コマンドがあるわ。一方、オプション製品では、MySQL Enterprise Backup という製品があるわ。
くるり:
バックアップソフトウェアと比較して、データベースの標準機能やオプション製品はどういうメリット/デメリットがあるんですか?
みら子:
標準機能なら無償なことと、バージョンアップに確実に対応しているし、データベース管理の一貫で作業できるから運用を効率化できる、ということがメリットね。
オプション製品の場合は有償で、しかもバージョンアップにすぐに対応できないというデメリットがあるわ。ただし、標準機能よりも使いやすく、詳細設定ができることはメリットね。
ストレージの機能を使う方法
くるり:
他にもデータバックアップの方法はありますか?
みら子:
やっぱり、データをたくさん保存するには、ストレージ製品を使うことが多いから、ストレージ製品が持っている機能を使ってバックアップするというのも定番ね。その場合は、スナップショットという機能を使って、バックアップするのが多いの。
くるり:
スナップショットって、何ですか?
みら子:
スナップショットは、ストレージ上の「ある時点」のデータ領域の状態のこと。
ストレージは、「スナップショットを取得した時点」のデータを持ち続けるので、サーバサイドで、データを更新してもスナップショットの内容は変わらないの。そのスナップショットを別のサーバからアクセスして、テープドライブにバックアップを取ったりするのよ。
くるり:
どういうメリットがあるんですか?
みら子:
スナップショットを使うと、「ある時点」のデータがすべて取得できるので、いつでもフルバックアップのイメージが取得できて、しかも高速なの。だから、大容量データのバックアップに非常に向いているわよ。
レプリケーションを使う方法
くるり:
わかりました。ところで、この前、調べもので検索していたら、MySQL レプリケーションを使ってバックアップ、という記事を読んだのですけど、レプリケーションでバックアップというのもあるのですか?
みら子:
なかなか、よく勉強しているわね。そうね、一般的には、レプリケーションというと、東日本大震災以降に災害対策という観点から注目が高まったんじゃないかしら。別に、災害対策だけでなくて、バックアップにも利用できるのよ。
くるり:
もう少し詳しく教えてください。
みら子:
レプリケーションは、ディスクボリュームやデータベースの完全なコピーを複製する方法なの。これまで説明してきたバックアップソフトウェア、データベースソフトウェア、ストレージソフトウェアで、レプリケーション機能を提供していることも多いの。データが更新されてると同時にネットワーク上にあるサーバやストレージにデータをコピーしていくのよ。
くるり:
さっきの災害対策って、どういうことなんですか?
みら子:
分かりやすい例だと、東京にあるサーバのデータをレプリケーション先として、大阪のデータセンターにあるサーバを指定したとするわよ。もし、災害で東京のサーバが障害や災害などで使えなくなったとしても、その時点での最新状態が大阪にあるサーバに複製されているので、そのまま業務を継続できるといったような使い方かな。
くるり:
ありがとうございます。イメージがつかめました。では、結局、どのデータバックアップ方法がおすすめなんでしょうか?
みら子:
答えとしては、状況によるというしかないわよね。費用、運用体制などを考えて、どれがいいかを考えてみるの。
くるり:
つまり、僕たちの提案のしどころなんですね。もっと勉強して、お客様が便利になるバックアップ方法を提案できるようにします。
みら子:
がんばってね!
* バックアップ用語集
レプリケーションとは:
レプリケーション(Replication)とは、ソフトウェアやハードウェアの冗長なリソース間で一貫性を保ちながら情報を共有する処理のこと。データベース管理システムにおいては、負荷分散や耐障害性の向上などを目的に、あるデータベースとまったく同じ内容のレプリカ(複製)を別のコンピュータ上に作成して、内容を同期させる機能のこと。マスターデータベースとレプリカは通信ネットワークなどで相互にデータを交換し、常に内容を一致させている。
新入社員のくるり君は、データバックアップについて理解したようです。次回は、最終回として、バックアップをとったデータをどうやってリカバリするかについて説明します。ぜひお楽しみに!
バックアップのチェックポイント
- データバックアップには、大きく、バックアップアップソフトウェアを使う方法、データベースの機能を使う方法、ストレージの機能を使う方法、レプリケーションを使う方法がある。
- 費用、運用体制を考慮した上で、データバックアップをどうするか考える必要がある。
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