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26 年 4 月施行! 携帯法改正で IC チップ読み取りへの対応が急務に

はじめに

来年 4 月に改正法の施行が予定されている、通称「携帯法」。施行に向けて、総務省では 2025 年 1 月 27 日より、「携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律施行規則の一部を改正する省令案に対する意見募集」を行っています。具体的な改正内容はどうなっているか、どのような影響があるのかについて解説します。

出典:総務省  携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律施行規則の一部を改正する省令案に対する意見募集

2023 年 6 月 9 日にデジタル庁より公開された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」において、犯罪による収益の移転防止に関する法律(以下、犯収法)、携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律(略称「携帯電話不正利用防止法」以下、携帯法)に基づく非対面の本人確認手法は公的個人認証に一本化すると記載されました。これ以降、具体的にどのような法改正が行われるか注目されていましたが、今回携帯法についていよいよ動きがありました。
今回の改正は携帯法に定義される「携帯音声通信事業者」(MVNO や MNO)に影響があるものとなりますが、対象の事業者様において、今後の対応検討や情報収集の一助にしていただければ幸いです。

オンラインでの本人確認方法が厳格化、携帯法改正のポイント

今回の携帯法改正は「令和 8(2026)年 4 月 1 日から施行」とされており、改正における主なポイントは以下3つと捉えています。

  1. 本人容貌撮影+写真付き本人確認書類撮影(現携帯法「ハ」)の方式廃止
  2. 本人確認書類の写し+転送不要郵便等(現携帯法「ヘ」)の方式廃止
  3. 非対面での顔写真のない書類送付原則禁止(一部書類は継続利用可能)

これによる一番の影響は「オンラインの非対面本人確認において、Web サイトだけでは本人確認を進められなくなる」という点です。以下、13 について解説していきます。

1 はオンラインでの本人確認として広く普及している方式で、自分の顔写真撮影に加えて、マイナンバーカードや運転免許証の表面、裏面、斜めなどを撮影する手法です。本記事をご覧の皆さまも、一度は行われたことがあるのではないかと思います。

ただ、昨今は本人確認書類の偽造も精巧になっており、撮影画像の真贋判定は困難さを増しています。河野太郎前デジタル大臣のブログでも「特殊詐欺に悪用された携帯電話回線のうち、契約時の本人確認書類が把握されているものが619回線」「619回線の本人確認書類のうち、偽造されたものは419回線」と記載されており、その被害の多さが伺えます。

出典:衆議院議員 河野太郎公式サイト 2024 年 6 月 8 日掲載「偽造カード」より

この実態に鑑み、本人容貌撮影+写真付き本人確認書類撮影は今回の改正で廃止されます。

2 もオンラインでの本人確認として利用されている方式で、Web サイトなどで本人確認書類の撮影画像(写し)をアップロードし、書類住所に転送不要郵便などを送付する手法です。

本方式も 1 同様、撮影画像の真贋判定は困難さを増しており、場合によってはアップロード前に画像の偽造などが行われる可能性も考えられることから、今回の改正で廃止されます。

3 は顔写真のない本人確認書類を送付し、書類住所に転送不要郵便などを送付する方式で、「顔写真のない本人確認書類を送付」について、これまでは住民票の写し(原本)などの他、官公庁から発行され(またはそれに類する書類)氏名・住所・生年月日の記載があるものも利用可能となっていました。それが今回の改正で、住民票の写し(原本)など、偽造・改ざん対策が施された書類のみ利用可能とされました。

方式としては継続利用可能であるものの、利用できる書類に厳格さが求められるようになります。

上記のうち、12 は「Web サイトだけで本人確認を完結できる(2 においては、Web 手続後に転送不要郵便などは必要)」方式として利用されてきましたが、今回の改正による 12 の廃止をもって、携帯音声通信事業者様は「Web サイトだけでは本人確認を進められなくなる」という状況になります。

非対面での本人確認で IC チップ読み取りが必須に、事業者への影響は?

Web サイトだけでは本人確認を進められなくなるとどうなるのか。それは本人確認が Web からスマホのネイティブアプリを利用した IC チップ読み取りへ移行していくことを意味します。

もちろん、対面や郵送の本人確認は今後も利用可能ですが、オンラインでの非対面本人確認を完結させようとする場合、ネイティブアプリによる IC チップ読み取りが必須です。今回の携帯法改正が施行されたのち、オンラインでの非対面本人確認を完結させるためには、以下の方式を利用する必要があります。

  1. 本人容貌撮影+IC チップ読み取り(現携帯法「ニ」から 改正携帯法「ハ」へ変更)の方式
  2. 電子署名の方式利用(現携帯法「チ」から 改正携帯法「ト」へ変更)の方式
  3. IC チップ読み取り+転送不要郵便等(改正携帯法「ニ」として新設)の方式

上記 46 の方式は、いずれも IC チップ読み取りが必要です。

現時点で、iOS、Android ともに Web ブラウザ経由ではマイナンバーカードなど NFC Type B の読み取りは行えず、スマホのネイティブアプリを利用する必要があります。

※iOS においては「App Clip」、Android においては「Google Play Instant」という機能を活用することで、ブラウザ経由で簡易的にネイティブアプリを利用することも可能です。ただしサイズ制限などの制約も存在します。

ネイティブアプリ利用の懸念で、すぐ思い浮かぶものとして「これまで Web サイトのみで運用していてアプリの知見がない」「Web からアプリに遷移させると利用者の離脱が心配」などがあります。とはいえ改正はすべての携帯音声通信事業者様が対象となることから、同事業者がオンラインでの非対面本人確認を実現するには、ネイティブアプリの利用を前提とした全体設計にシフトしていく必要があると考えられます。

今回の改正では対面での IC チップ読み取り義務化が含まれていないものの、今後さらなる改正により対面 IC チップ読み取りが必要となるのは既定路線と見るべきであり、国の方針として、安心安全な本人確認のため IC チップ読み取りへ本格的な舵が切られ始めた印象です。

携帯法改正に伴う 3 つの対応策、メリットとデメリットは?

対応検討に先立ち、改正前後で、携帯法における自然人の本人確認方法がどのように変更されるのかを下表にまとめます。

改正前(現) 改正後
規程
※1
内容 規程
※1
内容
本人容貌撮影+写真付き本人確認書類撮影 本人容貌撮影+IC チップ読み取り
※改正前「ニ」
本人容貌撮影+IC チップ読み取り IC チップ読み取り+転送不要郵便等
※新設
顔写真のない本人確認書類+転送不要郵便等 顔写真のない本人確認書類+転送不要郵便等
※住民票の写し(原本)等に限る
写し+転送不要郵便等 特定事項伝達型本人限定受取郵便等
※改正前「ト」
特定事項伝達型本人限定受取郵便等 電子署名(公的個人認証)
※改正前「チ」
電子署名(公的個人認証) 本人確認書類+転送不要郵便等
※新設 住民基本台帳法の適用を受けないもの(短期在留外国人など)に限る
写し+転送不要郵便等
※新設 住民基本台帳法の適用を受けないもの(短期在留外国人など)に限る
※1
携帯法施行規則第 3 条第 1 項第 1 号

表1:改正前後での携帯法における自然人の本人確認方法(主な変更点)

先のセクションの繰り返しとなりますが、Web サイトだけで本人確認を完結できる改正前「ハ」方式、「へ」方式(改正前「へ」方式において、Web 手続後に転送不要郵便などは必要)が改正後は廃止されていることから、それ以外の方法を検討する必要があります。

改正後は Web サイト上での完結ができず、どうしても他方式に切り替える必要があり、その中でもオンライン非対面本人確認で利用できるのは改正後「ハ」方式、「ニ」方式、「ト」方式になります。これらの方式は IC チップ読み取りを必要とし、その対応には現時点でネイティブアプリが必要となります。

現実的にネイティブアプリの利用を検討しなければならないとなった時、考えられる方法がいくつかあります。

  1. 自社でネイティブアプリを用意する(すでにネイティブアプリを展開している場合、Web からアプリへの導線を整備する)
  2. eKYC ベンダーが提供するネイティブアプリ、SDK を利用する
  3. デジタル庁が提供するデジタル認証アプリを利用する

A 方式が適するケース:自社でネイティブアプリを展開済み、もしくはネイティブアプリを用意する前提であれば、A の方法が解決策になりえると思います。

自社アプリのダウンロード数、インストール数を増やす機会として前向きに捉え、利用者様の導線を踏まえた全体構成の見直しを行うことも考えられます。

B 方式が適するケース:自社でネイティブアプリを持たずノウハウがない、ネイティブアプリ開発の経験はあるが eKYC について知見がないといった場合、B の方法が解決策になりえると思います。

ネイティブアプリを新しくいちから用意すると相応にコスト(iOS/Android 両方への対応が必要で、各ストアへアップロード / 審査を受ける工数、その後の運用にかかる工数など)がかかるため、すでに知見を持ち合わせているベンダーを活用することでコストの圧縮が期待できます。

C 方式が適するケース:自前でのネイティブアプリにこだわらず国が提供するデジタル認証アプリで良い場合、もしくは自前のネイティブアプリと並行し流入の口を広げたいという場合、C の方法が解決策になりえると思います。

デジタル認証アプリは国が運用するため、事業者様個別でアプリそのものに関する運用コストはかかりません。また、複数事業者様が共通して同じアプリを利用するため、すでに利用者がデジタル認証アプリをインストール済みであれば、新規にインストールする手間が発生しないというメリットもあります。

一方で、デジタル認証アプリ自体のカスタマイズはできませんし、容貌撮影ができないため改正後「ハ」方式に利用できず、対応する本人確認書類はマイナンバーカードのみで、何か不明点などがあった場合はデジタル庁へ問い合わせする必要があるなど、小回りは利かなくなります。

それぞれメリット、デメリットが存在するため、自社の戦略に合わせて選択することが重要です。以下に各対応方法のメリット、デメリットをまとめます。

対応方法 メリット デメリット

自社で用意(A)

  • アプリのカスタマイズが自由に可能
  • 自社 Web サイトからの導線を考慮した作りこみも可能
  • 既存でアプリがあれば本人確認機能を組み込むことでリーズナブルに対応可能
  • 開発コスト、運用コスト高
  • eKYC(法対応含む)の知見が必要
  • 新機能拡張等もすべて自社で行う必要がある

eKYC ベンダー利用(B)

  • eKYC に必要な機能は備わり、機能拡張も随時行われるため、開発コストを圧縮できる
  • ベンダーがもつ豊富な eKYC の知見を活用できる
  • 法対応も含めたアプリ・サービス運用を安心して任せられる
  • アプリのカスタマイズに制約がかかる可能性がある
  • eKYC ベンダーの仕様に従った実装にする必要がある
  • トランザクションが増えると、運用コストが自社開発コストを上回る可能性がある

デジタル
認証アプリ利用(C)

  • アプリの開発、運用コストが不要
  • 国が提供するアプリであり、今後一層の普及が見込める(=インストール済みのユーザーが増える)
  • 法対応も含めたアプリ・サービス運用を安心して任せられる
  • アプリのカスタマイズ不可
  • 対応する本人確認書類がマイナンバーカードのみで、かつ、本人容貌の撮影には対応していない(=改正後「ハ」方式不可)
  • デジタル認証アプリサービス API との連携が必要

表2:対応方法のメリット・デメリット

サイバートラストでは、お客様の選択にあわせ、ABC いずれの方法もご支援できる体制を整えています。また、公的個人認証サービスを提供するプラットフォーム事業者として多種多様な業種のお客様に活用いただいている知見から、お客様の状況をお聞かせいただくことで、いずれの方法が最適かのご提案も可能です。

例えば A であれば、自社開発を容易にするため、ネイティブアプリに組み込んでいただく eKYC ライブラリをご提供しており、公的個人認証や署名検証の機能も API で簡易に実現可能です。B であれば弊社パートナー様をご紹介することが可能ですし、C であればデジタル認証アプリの利用を簡易に実現する「 iTrust 本人確認サービス デジタル認証アプリサービス対応 SDK」を提供しています。

対応検討にあたりまずは情報収集をしたい、どの方法が最適か相談したいなどありましたら、是非ともサイバートラストまでお問い合わせください。

さいごに

今回の携帯法改正は「令和 8 年 4 月 1 日から施行」となっているため、対応にスピードが要求されます。

図1:対応スケジュール

現在は改正案の意見募集期間であり、寄せられた意見によっては、改正の内容や施行時期が変更になる可能性もあります。ただ、意見募集にあたり総務省にて行われた規制の事前評価書を見ると、改正される規制の妥当性について「本人確認方法をさらに厳格化するべく、法的な措置を講ずるものであり、その他の規制手段は考えられない。」と強い論調で記されており、偽造による被害が拡大している状況を鑑みるに、現在の内容から変更が行われることはないであろうと推察されます。

従いまして、事業者様におかれては「内容や時期が変わるだろう」という期待をもとに検討されるより、現在の内容で施行されることを前提にした早期の対応検討をおすすめします。

早期の対応検討をおすすめする理由は、「内容が変わることはないであろう」という点の他、 今後犯収法でも同様の改正が行われていくであろう ことがあげられます。

今回は携帯法の改正であり影響を受けるのは携帯音声通信事業者様のみですが、犯収法の改正となると非常に多くの事業者様が影響を受けることとなります。犯収法でも本人容貌撮影+写真付き本人確認書類撮影の方式(犯収法「ホ」方式)は広く使われているため、これが廃止と公布された場合、各事業者様が対応検討を同時期に始めることとなり、eKYC ベンダーなどへの依頼が集中し、行列待ちが発生するものと思われます。eKYC ベンダーなどのリソースも有限ですから、最悪のケースとして「依頼が遅れ、対応が施行時期に間に合わない」という事態も考えられます。

今回犯収法より先に携帯法で改正案の意見募集が行われたのは、対象となる事業者様の数を勘案したうえで市場への影響度合いを見る指標とすること、および犯収法と携帯法で公布、施行時期をずらすことで市場の対応時期を分散させることが狙いにあるのではないかと想像できます。ゆえに、携帯法改正にともない対応着手を進められている携帯音声通信事業者様の他、犯収法の対象事業者様におかれても、依頼の行列に並ばないため、いまから検討を進められることをおすすめします。

サイバートラストの iTrust 本人確認サービスは、携帯法、犯収法に対応しており、広くさまざまなお客様に採用いただいています。また、スマホ JPKI や最新の基本 4 情報取得、マイナ免許証の読み取りなど、法改正や国の施策にいち早く対応します。今後ますます重要度が高まる IC チップ読み取りについて検討を進められる場合、お気軽にお問い合わせフォームからご連絡ください。

この記事の著者
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金子 大輔

2012 年サイバートラスト入社。PKI 商材の技術サポート、品質保証に従事し、2020 年より iTrust 本人確認サービスのプロダクトマネージャー兼プロジェクトマネージャーを担当。2022 年よりトラストサービスを統括するトラストサービスマネジメント部部長に就任。米国 PMI 認定 PMP / 加国 IIBA 認定 CBAP。

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