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【第 2 回】 電子署名と本人確認を利用した契約の DX ~ 宅地建物取引業法の法改正で解禁された書類の電磁的方法による提供について ~

はじめに

デジタル改革関連法による宅地建物取引業法の法改正が 2022 年 5 月に施行され、不動産契約の電子化が解禁されました。

前回の記事 では、電子署名と本人確認のメリットについて触れましたが、今回は不動産取引の電子化が解禁された書面と、その取扱いについて解説します。

宅地建物取引業法改正により電子化が解禁された書類について

宅地建物取引業法では次の書面を交付することが義務化されています。

  • 媒介契約締結時書面(宅建業法第 34 条の 2)
  • 指定流通機構(レインズ)への登録を証する書面(同法第 34 条の 2 第 12)
  • 重要事項説明書(同法第 35 条)
  • (売買契約・交換契約・賃貸契約などの)契約締結時書面(同法第 37 条)

宅地建物取引業法が改正される以前は、上記の書面は全て紙での交付しか認められていませんでした。
しかし、同法の法改正により「電磁的方法による提供」、つまりは電子化が解禁されました。
電子化した書面(電子書面)については、収入印紙も不要かつ書類送付もオンラインで済むため即日対応が可能になり、宅建業者と(説明の相手方などの)提供先の双方に大きなメリットがあります。
電子書面に収入印紙が不要な理由については、BLOG:書面の電子化における各種法制度と政府の動向 で解説していますように、国税庁の印紙税に係る「その他法令解釈に関する情報」として、その理由が公表されています。

重要事項説明書の電子化について

電子書面を扱うには、いくつかの要件を満たすことが必須になります。

これらは、国土交通省提供の次のマニュアルを参考にしております。
詳細や留意事項等はこちらから確認ください。

重要事項説明書等の電磁的方法による提供及び IT を活用した重要事項説明 実施マニュアル

 

電子書面の提供には、次の要件を満たし、提供先から承諾を得る必要があります。

  • 提供先からの、電磁的方法による提供に関する承諾の取得
    • 提供の方法の承諾
    • 提供するファイル形式の承諾
    • 電磁的方法による提供についての承諾
    • 提供方法等の説明
    • 提供先の IT 環境の確認

加えて、提供する電子書面そのものにも要件があります。

  • • 提供する電子書面の要件
    • 提供先が、電子書面から書面(紙)を作成できるものであること
      (34 条の 2 書面・35 条書面・37 条書面が対象)
    • 電子書面が改変されていないことを確認できる措置を講じていること
      (34 条の 2 書面・35 条書面・37 条書面が対象)
    • 提供に関わる宅建士が明示されていること
      (35 条書面・37 条書面が対象)

上記を踏まえて、電子書面の提供の流れは次の図のようになります。

 電子署名を用いた重要事項説明書等の電磁的方法による提供のイメージ

電子署名を用いた重要事項説明書等の電磁的方法による提供のイメージ

また、電子書面が改変されていないことの確認方法についても説明の必要があり、次の図のように提供先に改変がないかの確認をもらうことが求められます。

 署名パネルによる確認方法のイメージ

署名パネルによる確認方法のイメージ

※ 国土交通省の実施マニュアルから図を引用
(出典)国土交通省「 重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明実施マニュアル

そのほか、重要事項説明や契約の際は説明の相手方が契約当事者の本人であることの確認も必要になりますが、こちらについては次回号で解説します。

署名について

「改変されていないことを確認できる措置」としては、実施マニュアル上では電子署名やタイムスタンプが挙げられています。

電子署名とは契約書に押印と同等の行為を電子的に行う処理のことです。
電子署名を用いることで、間違いなく契約者が本人であり、契約書の内容が改ざんされていないことが確認できます。
この仕組みの詳細については、BLOG 電子契約における電子署名の仕組み をご参照ください。

タイムスタンプも、電子署名のように電子契約書や電子文書に付与されるものです。
タイムスタンプにより、電子契約書等がいつから存在しているか、そしてその時点から改ざんされていないことが確認できます。
この仕組みの詳細については、BLOG タイムスタンプの役割と長期署名 をご参照ください。

ただし、電子署名やタイムスタンプには暗号技術の危殆化の観点から有効期限があり、電子署名は発行から 5 年、タイムスタンプは 10 年までです。
有効期限が切れると、改ざんされていないことの確認などができなくなり、証拠能力が低下してしまいます。
実際の契約は 5 年、10 年以上継続されるものが存在しているため、そのままでは契約期間内に有効な契約書を失ってしまう可能性があります。

しかし、電子署名の有効期限はタイムスタンプを用いることで延長が可能です。
タイムスタンプには、電子署名の際に発行される署名時タイムスタンプと、そのタイムスタンプと署名などを包む保管タイムスタンプというものがあります。
最新の暗号技術を用いた保管タイムスタンプで全体をさらに包むことで、有効期限を延長する長期署名を実現しています。
この仕組みの詳細については、BLOG タイムスタンプの役割と長期署名 をご参照ください。

また、PDF などの電子署名には秘密鍵が必要であり、その秘密鍵は厳重に保管しなければなりません。
iTrust リモート署名サービス では、利用者の秘密鍵は電子認証センター設備内の HSM(ハードウェアセキュリティモジュール)で安全に保護されています。
また、本サービスでは長期署名にも対応しており、書面の真正性を数十年にわたって確保可能です。
タイムスタンプも、電子帳簿保存法に対応した認定タイムスタンプを利用しており、安心してリモート署名を利用できます。

今後予想される取引の変化について

今回紹介した通り、電子書面を扱うにはいくつかのハードルが存在します。
ただし、新型コロナウイルス感染症を契機に、DX の需要は加速度的に高まっていきました。
不動産取引についても同様であり、さらに物理的な紙で発生していた時間・金銭的なコストの削減なども可能になることから、今後はオンラインでの取引が主要になっていくことが予想されます。

今回は、書面の電磁的方法による提供について紹介しました。
次回では、非対面取引で必要になるオンラインで完結する本人確認方法について解説します。

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