ものづくりの技術者育成の実績を活かして、生徒と担当教員がシステム構築。学校と同窓会の力を結集し、ネットワーク経由のリアルタイム配信を実現
事例企業: 福岡県立小倉工業高等学校
導入前の課題
工業高校としての ICT 教育環境づくりでデジタルサイネージの導入を計画
同窓会の強力な支援により実現
2006 年、篭原元校長先生の在職時に「掲示教育」の充実と工業高校らしい ICT(情報通信教育)を活用した先進的な教育環境をつくることを目指し、デジタルサイネージの導入が計画されました。2009 年に創立 110 周年記念事業の一環として運用開始を着想しましたが、公立学校の限られた予算の中ですべてのシステムを一度に導入することは難しく、まずは 30 教室に薄型プラズマテレビを設置するにとどまりました。
掲示教育の推進に理解を示し、サイネージシステムの導入をサポートしたのが同校同窓会組織である「北辰会」でした。北辰会が運営する教育振興基金の一つ、科学研究奨学会の資金援助によりデジタルサイネージプレイヤーを購入できることになりました。
導入の目的・解決手段
既設のディスプレイを活用し単体で導入でき、
ライブ放送可能な点が決め手
各教室に導入済みのディスプレイを活用するため、プレイヤー単体で購入でき、当初から実現を希望していたライブストリーミングのできるデジタルサイネージが採用の条件でした。
「MIRACLE VISUAL STATION DS302」は、この二つの条件を満たし、ライブストリーミングのシステムを構築する上で、Flash プレイヤーが搭載されている点が決め手となりました。
他社での導入事例や報道記事をきっかけに、Web サイトから問い合わせをしたところ、九州地区を担当する販売パートナー(株式会社橋本商会)が迅速に対応できたことも採用の大きな要因となりました。
システムの設置と構築は、外部の導入支援を受けずに、担当の先生と 5 人の生徒が夏休み期間中に行いました。
導入効果
緊急連絡もライブ放送で即時に伝達
全校集会ができない際にも各教室へ情報配信を実現
プレイヤーを設置するまでは、各教室でディスプレイとパソコンと繋いで、パソコン上で作成した静止画のお知らせを投影していました。また、一斉放送などで全校生徒に向けて発信する手段はありませんでしたが、デジタルサイネージの導入によりライブ放送で学校長の訓辞やお知らせを各教室に一斉配信できるようになり、ニュース性の高い旬の情報や緊急連絡事項も即時に伝達できるようになりました。
また、一堂に会して行う全校集会がインフルエンザなどの理由で開催できない場合にも、必要な情報伝達ができ、防災緊急放送等にも活用できるようになりました。
既設のディスプレイを活用し、効果的な掲示教育を実現するデジタルサイネージ
福岡県立小倉工業高等学校(以下、小倉工業高校)は、2009 年に創立 110 年を迎えた伝統ある公立高校で、機械系・電気系・化学系の分野においてものづくりのスペシャリスト育成の実績を豊富に持ち、主要な先進企業への高い就職率を誇っています。また、卒業生に多くの著名な実業家や技術者、スポーツ選手、近年では技能五輪世界大会において 3 名の金メダリスト、国内大会でも多数の金賞受賞者等を輩出するなど、勉学にとどまらず幅広い教育活動を推進しており、福岡県内はもとより、九州・全国でも屈指のレベルを誇る工業高校として、受験生や産業界から高い評価を得ています。
小倉工業高校では、情報メディア教育にも積極的に取り組んでおり、各教室と特別教室に合計 30 台のプラズマテレビとネットワーク設備を設置していました。これらの既存の資産を活かして、効果的な掲示教育を推進するため、デジタルサイネージの導入を早期から検討していました。
学校長の訓辞や学校行事の動画、時間割などの静止画コンテンツ、防災緊急連絡などの Web コンテンツ配信に適する機器として、ミラクル・リナックスのデジタルサイネージ製品「MIRACLE VISUAL STATION DS302」を採用いただきました。
デジタルサイネージを活用したライブ放送
※「福岡県立小倉工業高等学校」公式サイト
ユーザーニーズ
- 各教室に設置済の既存の資産(プラズマディスプレイ)を活用
- ネットワークを介して、家庭用のビデオカメラを利用したリアルタイム配信が可能
- 操作や管理が手軽で簡単な運用
- 費用を抑えて導入できる低価格のデジタルサイネージプレイヤー
ユーザーセレクト
- 「MIRACLE VISUAL STATION DS302」
既存の資産を活用し、ライブ放送や動画・静止画コンテンツなど多様な情報をすばやく配信
掲示教育の推進にあたり、必須だったライブストリーミングができる MIRACLE VISUAL STATION を採用
デジタルサイネージプレイヤーの導入で、より多様なコンテンツを配信
「既設の薄型プラズマテレビに取り付けられるプレイヤーを探していたのですが、プレイヤー単体で販売しているメーカーはほとんどなく、セット販売しているメーカーにプレイヤーのみの販売を掛けあっても応じてもらえませんでした。しかし、インターネットで情報を探し続けたところ、MIRACLE VISUAL STATION の存在を知り、すでに検討していた二製品と比較を行いました。プレイヤー単体で導入することができたことと、構想を温めてきたライブストリーミングのシステムをオープンソースで構築する上で、Flash プレイヤーが搭載されていたことが採用の決め手になりました。」担当の福來智昭先生は採用にいたるまでの経緯を振り返りました。
ライブ配信のシステム構成イメージ
学校行事や事務連絡などのお知らせの掲示は、プレイヤー導入前はパソコン上で作成した静止画を各教室のパソコンからディスプレイに接続して個別に投影していましたが、それらの画像をコンテンツ配信ソフト EMPopMaker を利用して各教室に配信できるようになりました。
ライブ放送については、当初はマルチキャストでライブストリーミングを行うことを考えていましたが、エンコーダーなどの必要機材を揃えるには大きなコスト負担が障害となっていました。模索した結果、Flash サーバを用いることで当初の構想に近いライブ配信ができることが分かり、オープンソースの “red5” を利用して念願の機能を構築しました。導入後初のライブ放送は、山本久信前学校長が約 5 分間の訓辞を各クラスに配信し、福岡県内でも初の試みとなるライブ放送が実現しました。校長室にビデオカメラと映像配信用のパソコンを設置し、動画データをサーバ室に送り、サーバ室から各教室のプレイヤーを経由してディスプレイに配信する仕組みです。
元校長の着想を前校長・先生方が引継ぎ、同窓会の援助により実現
デジタルサイネージの導入は、篭原裕明元校長(現同校同窓会 教育振興基金理事長)の在職時に着想されました。同校同窓会組織の北辰会がこの技術に理解を示し、資金的な援助を行いました。また、後任の山本前校長も小倉工業高校生の技術力やこれまでの実績を活かしてシステムを構築することに積極的な理解があり、元校長から始まった「掲示教育の推進」と「工業高校らしい ICT 教育環境づくり」を実現するデジタルサイネージシステムが導入できました。
写真左から、山本前校長、福來(ふくらい)先生、同窓会 坂田事務局長、大野教頭
電子科・電気科の学生と担当教員がシステムを構築
サイネージシステムの設置・構築は 2011 年の夏休みから福來先生と有志で集まった 5 人の生徒(電気科 3 年生 1 名、電子科 2 年生 4 名・2011 年当時)によってスタートしました。数多くの優秀な人材を輩出してきた同校の伝統は他に先駆けて先進的なことに取り組むことです。今回のサイネージも外部 SI などに依頼することなくすべて自分たちの力で約 1 か月間かけて自分たちで決めた仕様で構築を行いました。
構築にあたった在校生は次のように振り返っています。「ディスプレイの後ろにプレイヤーを取り付けるのが難しかったです」(大野優希さん)。「機材を設置する際の配線に苦労しました」(茶圓章弘さん)。「はじめてのことでも、やってみて分かると面白かったです」(菊山優斗さん)。「プレイヤーの設置や配線に苦労しました」(松尾聡浩さん)。構築を手がけ 2012 年春に電気科を卒業した片岡浩平さんは、このような活動も評価され、九州地区の有力な鋼材供給企業への就職も決まりました。
電気科担当教員の福來先生は、「電子科の教科ではあるが、ライブ放送を各科の教室に配信でき、自分たちで実現したことが全校生徒にとって良い刺激になると思う」と、導入から運用を生徒とともに実現したことによる期待も語ってくれました。「まずは各教室に導入したサイネージシステムを、今後は学校玄関や共用部分にも設置して、工業高校ならではの技術力アピールにも役立てて行きたい」と山本前校長もサイネージの活用に積極的な意向を語っています。
写真左から、松井さん、菊山さん、福來先生、茶圓(ちゃえん)さん、大野さん