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「iPhone のマイナンバーカード」と AppleWallet との関係性は?

~ 2025 年 6 月リリース!「iPhone のマイナンバーカード」を徹底解説(前編)~

はじめに

2025 年 6 月 24 日、デジタル庁より「iPhone のマイナンバーカード」提供開始に関するお知らせが公開されました。この記事では、iPhone のマイナンバーカードとは何なのか、Apple ウォレットやスマホ JPKI と呼ばれるものとどういう関係があるのか、Android も含め今後の本人確認書類がどう拡大・変化していくのかについて、前編・後編に分けて解説します。

「デジタル庁 マイナンバーカードをあなたの iPhone に」ページの画面

出典:デジタル庁 マイナンバーカードをあなたの iPhone に

「iPhone のマイナンバーカード」とはいうものの、それで具体的に何ができるのか、どう使えるのか、 Android の対応時とは何が違うのか、2026 年導入が検討される「次期マイナンバーカード」はどうなっているのか など、新しい情報が出てきたことで理解が進む部分もある一方で、本人確認の全体像として疑問が深まる部分もあろうと思います。

2028 年冬頃まで、本人確認にかかわる新サービスの提供開始や本人確認手法の導入、法改正が目白押しとなります。今回、2023 年から 2028 年までの動向を一覧でまとめた「対応検討の全体スケジュール表」を作成しました。 iPhone のマイナンバーカードが指し示す範囲の解説や今後の本人確認における全体像を整理することで、事業者様における今後の対応検討の一助になれば幸いです。

なお、直近の本人確認方法見直しに関しては以下ブログ記事にまとめていますので、よろしければこちらもご参照ください。

また、過去の記事では Apple ウォレットについて「AppleWallet」と記載していますが、本記事においてはデジタル庁のサイトにあわせ「Apple ウォレット」と記載します。

「iPhone のマイナンバーカード」が持つ本人確認上の 2 つの機能

前述したデジタル庁のサイトでは、iPhone のマイナンバーカードについて以下の通り説明されています。

iPhoneのマイナンバーカードとは「iPhoneのマイナンバーカード」は、iPhone(Appleウォレット)に入れて利用できるマイナンバーカードです。マイナポータルへのログインや、コンビニでの証明書取得などの行政サービスを、簡単かつ安全にご利用いただけます。

出典:デジタル庁 マイナンバーカードをあなたの iPhone に

「iPhone(Apple ウォレット)に入れて利用できるマイナンバーカード」とされていますが、物理的なマイナンバーカードには、本人確認に使う方法として大きく以下 2 つの機能が備わっています。

  1. ① 公的個人認証を行うための電子証明書
  2. ② マイナンバーカードの券面情報

デジタル庁のサイト説明を見ても、iPhone のマイナンバーカードという言葉には上記 ①、② の両方が含まれる前提で書かれているように見受けられます。

しかし、「Apple ウォレット」として格納されるのは ② の「マイナンバーカードの券面情報」であって、① の電子証明書は Apple ウォレットとして利用できるわけではありません。① の電子証明書は俗に「スマホ JPKI」と呼ばれるもので、Apple ウォレットとは別の機能として提供されます。スマホ JPKI と Apple ウォレットでは事業者様側での実装の方法も、ユーザー側での利用方法も異なり、法律上で認められる本人確認方法としても異なります。

スマホ JPKI と Apple ウォレット、機能による違いを整理

上記を読んで「余計に訳がわからなくなった」と感じられるかもしれませんが、この点を誤解なく整理することが iPhone のマイナンバーカードへの対応を検討する第一歩になります。以下、「犯罪による収益の移転防止に関する法律(以下、犯収法)」の本人確認方法との対応も含め表に整理します。

  iPhone のマイナンバーカード機能
スマホ JPKI
( 公的個人認証 )
Apple ウォレット
( カード代替電磁的記録 )
法律で定められる本人確認の方法 犯収法「カ」※1 犯収法「ル」※1
利用にあたり事業者様で必要な実装 マイナポータルアプリ連携 Apple ウォレット連携
必要な認定や承諾 主務大臣の認定 デジタル庁の承諾
ユーザーができること 電子証明書を利用した電子署名 本人確認情報の開示
取得可能な個人情報 ・氏名
・住所
・生年月日
・性別
・氏名
・住所
・生年月日
・性別
・個人番号
・顔写真
※1
犯収法施行規則第 6 条第 1 項第 1 号

表1:iPhone のマイナンバーカード機能整理

これまでにサイバートラストの各種ブログをご覧いただいている方であれば、表の内容に違和感があるかもしれません。具体的には、「公的個人認証は犯収法『ワ』ではなかったか?」と。

こちら、警察庁の「『犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則の一部を改正する命令案』に対する意見の募集結果について」に基づき 2025 年 6 月 24 日に改正犯収法が施行されており、これまで犯収法「ワ」とされていた公的個人認証を利用する本人確認方法が、新たに犯収法「カ」となりました。更にややこしいことに、今後 2027 年 4 月 1 日に撮影方式(犯収法「ホ」)の廃止等を含む改正が施行されますと、それをもって今度は犯収法「ヲ」となります。

同じように今回の施行で追加されたカード代替電磁的記録※2を用いる本人確認方法について、今回は犯収法「ル」として新設されましたが、2027 年 4 月 1 日の改正施行をもって犯収法「リ」となります。

※2
カード代替電磁的記録については過去のブログで解説していますので、よろしければそちらをご覧ください。

表では犯収法のみ触れていますが、「携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律(以下、携帯法)」においても新設や廃止にともなうイロハニホヘトの繰り上げ / 繰り下げにより犯収法同様ややこしいことになっており、本人確認方法についての会話をする場合、「2025 年 7 月時点での犯収法『カ』」や「旧犯収法『ワ』」のように、その方法が何を指すものか具体的に示さないと認識齟齬が生まれてしまう可能性があります。

さて、表に戻っての解説ですが、スマホ JPKI と Apple ウォレットでは、事業者様にて必要となる認定や届出、その実装方法についても全く別物となります。

スマホ JPKI は結局公的個人認証の利用となるため、主務大臣によるプラットフォーム事業者としての認定や、プラットフォーム事業者を利用するサービスプロバイダー事業者(みなし事業者)としての認定を受ける必要があります。一方、Apple ウォレットは公的個人認証と全くの別物であり、こちらは主務大臣認定ではなく、デジタル庁に利用の申請を行い、これを承諾してもらう必要があります。

主務大臣認定を受けているから Apple ウォレットは申請不要で利用できるとか、Apple ウォレットの申請が承諾されたらスマホ JPKI も利用できるとか、そういったことはありません。もっというと、技術的な実装において共通するところもありません。スマホ JPKI に対応したから追加実装なしで Apple ウォレットに対応できるかというと、そうはいきません。繰り返しになりますがスマホ JPKI と Apple ウォレットは全くの別物であり、事業者様での利用にあたってはそれぞれ対応が必要になります。

例えば、デジタル庁の「iPhone のマイナンバーカード」のサイト中に以下の Q&A があります。

デジタル庁「iPhone のマイナンバーカード」サイトのQ&A画面

出典:デジタル庁 マイナンバーカードをあなたの iPhone に

この中の「署名する方法」を開くと、「アプリやウェブサービスで iPhone のマイナンバーカードを使って署名する方法」として以下の説明が表示されます。

アプリやウェブサービスで iPhone のマイナンバーカードを使って署名する方法

出典:デジタル庁 アプリやウェブサービスで iPhone のマイナンバーカードを使って署名する方法

ここでは「署名用電子証明書を使って」とあり、Apple ウォレットを使ってとは書かれていません。「iPhone のマイナンバーカード」としてスマホ JPKI と Apple ウォレットがひとくくりになっていますが、この Q&A からも、その実態が「表1:iPhone のマイナンバーカード機能整理」で示した通り別の機能であることが見てとれるかと思います。

なお、ここまでは iPhone の話です。何が言いたいかというと、Android はまた別の申請、実装が必要になるということです。加えて、実店舗を持つ事業者様においては対面 / 非対面の両方で対応を検討していく必要があります。更に今後は第二世代在留カードやマイナンバーカードと一体化した特定在留カード、さらには次期マイナンバーカードも登場し、それらへの対応検討も必要です。

事業者様からすると「もう勘弁してください」という状況かと思いますが、とはいえ本人確認は事業継続において非常に重要な要素であり、目を背けることができない部分です。後編ではそれらの要素を整理していきます。

この記事の著者
金子大輔
金子大輔

2012 年サイバートラスト入社。 PKI 商材の技術サポート、品質保証に従事し、2020 年より iTrust 本人確認サービスのプロダクトマネージャー兼プロジェクトマネージャーを担当。 2025 年よりトラストサービス事業本部統括部長に就任。 米国 PMI 認定 PMP / 加国 IIBA 認定 CBAP。

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