2019 年 12 月 26 日
さまざまな業界で活用が進む電子契約書/電子契約とは
インターネットの普及で電子商取引が一般的となり、商品やサービスの契約、売買、請求や決済などオンラインでの取引がさまざまな分野で広がっています。
電子商取引の広がりと合わせて、電子文書のやり取りだけで契約を行う電子契約の活用が進んでいます。企業では、秘密保持契約書(NDA)にはじまり商取引を進めるうえでさまざまな契約書がありますが、これまで、一般的に企業間の契約では、証拠性や各種法令を遵守するため、書面による署名捺印を行った紙の契約書を用いて合意し、契約者双方で保管してきました。
昨今は、契約書を電子化した「電子契約書」に置き換える動きが特に米国で進み、日本国内でも関連する業界で広がっています。電子契約における法的有効性やメリットなどについて連載で解説します。
電子契約とは
電子契約とは、電子的に作成した契約書を、インターネット経由で契約先に送付し、契約内容の合意の意思表示として、契約当事者の電子署名を付与することによって契約を締結するものです。
書面への署名捺印に代わり、電子文書に「電子署名」「タイムスタンプ」や「電子サイン」を付与することで電子契約が可能です。
一般的に電子サインは第三者認証 * を行わず、電子文書の確認や承認などのプロセスで利用されるケースがあります。
電子署名は、第三者による本人認証や高度な暗号化技術により、重要性の高い厳格な契約締結で利用されます。また、タイムスタンプは、「いつ」電子署名されたかを時刻により担保し長期署名を行うために使用されます。
業界や業務によってさまざまな法令や規則があり、契約書の締結を電子契約で行う場合、電子署名法に定める要件を求めており、公的に有効性を立証するには「電子署名」による電子契約が有効です。
* 第三者認証
組織外の第三者によって審査され認証をうけるものです。例えば、ISO27001/ISMS などは第三者である外部機関が審査をして、承認を与えるものです。外部機関による「第三者認証」には、利害関係のない第三者による公正・公平な審査や認証により、取引先との信頼性を向上できるメリットがあります。
契約文書の電子化と電子署名
電子文書に適切な電子署名とタイムスタンプを付与することで、紙の契約書と同等の法的効力を持たせることが可能です。
電子署名には署名した本人を証明する署名用電子証明書 * が貼付されます。
* 署名用電子証明書
例えば e-Tax の電子申請のように、電子文書を作成し、ネットワーク経由で送信する際に利用するもので、
「作成・送信した電子文書が、利用者が作成した真性なものであり、利用者が送信したものであること」を証明することができます。
- 電子署名は、電子署名法第3条により、紙文書における押印や署名と同等の法的効力を持つものとされています。
- 電子契約において電子署名が持つ役割は以下の証明をすることです。
本人証明 電子文書が署名者本人により作成されたこと 非改ざん証明 署名時点から電子文書が改ざんされていないこと
文書の電子化において法的効力を持たせるためには、
- その文書が改ざんされていないこと(完全性)
- 本人が確かにその文書に署名したこと(本人性)
を証明する仕組みが必要です。
電子契約などの書面の電子化においては、標準的な電子ファイルフォーマットとして、PDF が大きな役割を担っています。PDF では、あらかじめ検証の環境設定をすることで、ファイルを開いたときに電子署名が検証され、検証の詳細を署名と共に表示することができます。
しかしながら、PDF ファイルへの電子署名は、どのような署名用電子証明書を利用しても「信頼できる電子署名」として表示される訳ではありません。
Adobe 社の審査を受けて「AATL:Adobe Approved Trust List(アドビ システムズ社の製品で信頼される電子認証局のリスト)」に登録された電子認証局から発行された署名用電子証明書で署名された電子署名のみが「信頼された電子署名」として表示されます。Adobe Acrobat や Acrobat Reader などで「有効な電子署名」として視覚的に信頼を確認でき、電子署名された PDF 文書を閲覧する人を想定した場合、電子署名用証明書が AATL に対応していることは必須要件と言えます。
次回は、電子契約化のメリットについて解説します。
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