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マイナ免許証の登場による本人確認への影響

はじめに

この記事では、マイナンバーカードと運転免許証を一体化し 2025 年 3 月 24 日から運用が開始される「マイナ免許証」について、その登場により何ができるようになるのか注目されている事業者向けに、マイナ免許証とは何なのか、どうすれば事業者としてマイナ免許証に対応できるのかについて解説します。

以前よりマイナンバーカードと運転免許証一体化の話は聞こえていたものの、2024 年 9 月に警察庁から正式な運用開始日の発表が行われたことで、世間から改めて注目されました。今後の対応検討や、情報収集の一助にしていただければ幸いです。

マイナ免許証とは

マイナンバーカードの IC チップにある空き領域に、警察庁が用意する「免許証カード AP」というアプリケーションを登録したマイナンバーカードが「マイナ免許証」となります。

出典: 総務省 マイナンバーカードの 3 つの利用箇所について

アプリケーションの登録にあたっては警察庁による IC チップへの書き込みが必要であるため、マイナ免許証の発行には最寄りの警察署などへ出向く必要があります。

ちなみに、マイナンバーカードへの運転免許証情報搭載については 2022 年 4 月 27 日交付の「 道路交通法の一部を改正する法律(令和 4 年法律第 32 号)」にてすでに触れられています。その全文は e-Gov 法令検索 にて確認することができ、そちらを見ると、マイナ免許証の法律上の名称が「免許情報記録個人番号カード」であることや、マイナ免許証と通常の運転免許証を同時に所持することが可能であること、マイナ免許証だけでも運転免許証とみなせること、マイナ免許証への免許情報記録は電磁的方法によることなどが確認できます。(免許情報とは、運転免許証番号や免許の条件、免許の色など、免許特有の情報を指します)

マイナ免許証に搭載される免許証カード AP については、警察庁が公開している「運転免許証及び運転免許証作成システム等の仕様の改正について」というドキュメントが公開されており、どのような情報が格納されるかなどの細かい情報を確認することができます。

出典:警察庁 「 運転免許証及び運転免許証作成システム等の仕様の改正について 」より一部抜粋

これらに電子署名した情報も格納されており、それを用いて署名検証を行うことも可能であるため、IC チップ読取によるデータの真正性確認が行えるのは利用者として安心できる部分です。

なお、免許証カード AP へアクセスするための暗証番号についても記載があり、数字 4 桁とされています。暗証番号の入力ミスが許容されるのは 10 回までで、それを超えると閉塞(ロック)されてしまうため、ロックされた場合は最寄りの警察署等でロック解除を行う必要があります。

免許証カード AP の大きな特徴は、氏名、住所、生年月日、性別といった基本 4 情報が格納されていないことです。これは次のセクションで解説しますが、免許証カード AP から取得する情報だけでは本人確認が行えないことを意味します。

マイナ免許証の登場による本人確認への影響

さて、先ほど「免許証カード AP には基本 4 情報が格納されていない」と記載しましたが、ではマイナ免許証ではどのように本人確認するのかと言うと、従来どおりのマイナンバーカードとして利用することになります。

マイナ免許証という呼び方だと一瞬混乱してしまいますが、結局は「マイナンバーカードの IC チップに免許証カード AP を搭載したもの」であるため、マイナ免許証で本人確認を行う場合にはマイナンバーカードとして利用すれば問題ありません。

マイナンバーカードを利用する本人確認方法としては、マイナンバーカードの券面を撮影する方法の他、サイバートラストの「iTrust 本人確認サービス」が対応する IC チップに格納された電子証明書を用いた公的個人認証による方法や、IC チップから読み取った情報を利用する方法などがあります。これらは現在も利用されている本人確認方法であるため、本人確認を行う必要がある事業者は従来と同様に本人確認を行うことができます。これらのうち IC チップを読み取る方法は、署名検証によるカードの真贋判定により、マイナンバーカードの偽造を確実に見抜くことが可能です。

以下に、犯罪収益移転防止法(以下、犯収法)上の主なオンライン本人確認方法を記載します。

規程 内容 IC チップ読取対応書類
公的個人認証 マイナンバーカード(マイナ免許証)
IC チップ+セルフィ― マイナンバーカード(マイナ免許証)
運転免許証
在留カード
書類の画像 /IC チップ+銀行照会 / 口座確認 マイナンバーカード(マイナ免許証)
運転免許証
在留カード
書類の画像+セルフィ― ―(IC チップ読取を行わない)
犯収法施行規則第 6 条第 1 項第 1 号の細分

表1:犯収法上の主たるオンライン本人確認方法

「マイナ免許証の登場による本人確認への影響」について、本人確認という点に絞れば特段の影響はなく、確認方法も既存と変わることはないと考えられます。本人確認書類としてマイナ免許証を提示されたとしても、本人確認に利用されるのはマイナンバーカードであるため、事業者としても「マイナ免許証が提示された場合の本人確認フローを新しく整備しなければ!」といった事態にはならないでしょう。

一方で、免許証情報を確認する事業者においては、マイナ免許証の登場で影響を受けることになります。

マイナ免許証への対応をどうすればよいのか

免許証情報を確認する必要がない事業者(①)と、免許証情報を確認する必要がある事業者(②)について、必要となる対応を考えていきます。

① の事業者においては、先のセクションでお話したとおり、仮に本人確認でマイナ免許証が提示されても従来のマイナンバーカードとして扱えば良いだけであるため、特段の対応は不要と考えられます。

しかしながら ② の事業者においては、マイナ免許証が提示された場合、「免許証カード AP から情報を読み取ることが必須」になります。

なぜなら、「マイナ免許証とは」で解説したとおり、マイナ免許証への免許情報記録は電磁的方法によることと定められており、マイナ免許証にしたとしても IC チップに免許情報が記録されるのみで、カード券面には免許情報が何も記録されないからです。

事業者が利用者からマイナ免許証の提示を受けても、見た目は通常のマイナンバーカードと何らかわりません。利用者から「これはマイナ免許証です」と通知を受けるなどして IC チップを読み取り、免許証カード AP から情報を読み出せて初めて免許情報を確認できます。

図1:目検ではマイナ免許証の免許情報を確認できない

つまり、事業者によってはこれまで IC チップ読取に対応しておらず、運転免許証を目検して本人確認と免許情報の確認をしていた場合、マイナ免許証になると目検だけでは免許情報が確認できないということになります。この点が、先ほど「免許証カード AP から情報を読み取ることが必須」と解説した理由です。

警察庁でも読み取り用のアプリを用意するといったニュースも散見されますが、仮にアプリがリリースされるとしても、どのように何の情報が表示されるのか、表示した情報は何かしらシステム的に連携されるのか、利用者のスマートフォンにアプリを入れて利用者のスマートフォン上で IC チップを読み取って情報を提示してもらうのかなど、2024 年 9 月末時点でまだまだはっきりしたことがわからない状況です。

このような状況であるため、事業者によっては「しばらくの間、マイナ免許証の対応は行わない。免許情報の確認は従来の運転免許証の提示を必須にする」という判断をされるかもしれませんし、差別化の一環として「どこよりも早くマイナ免許証に対応する」という判断をされるかもしれません。このあたりは事業者のスタンスなどによるところかと思いますが、遅かれ早かれ、マイナ免許証への対応=IC チップ読取の対応は重要性・必要性が増していくものと考えられます。

サイバートラストは、事業者における IC チップ読取をサポートするため、iTrust 本人確認サービスのオプションとして事業者アプリに組み込む「iTrust 本人確認サービス eKYC ライブラリ」と、そこから取得した情報の真正性を確認しカードの偽造を見抜く券面情報検証サービスをご提供しています。

今回解説した免許証カード AP についても、2025 年春を目標に、IC チップから読み取り可能とする機能の実装を進める予定です。マイナ免許証の対応にどうしたらいいかとお困りの事業者は、是非ともお問い合わせください。

さいごに

マイナ免許証として一斉に各種メディアで取り上げられ、便利になりそうと感じる利用者もいれば、降って湧いた話の対応に迫られ困られている事業者もいるのではないかと思います。

今回の記事は、そんな事業者の「マイナ免許証って何だ」「うちは影響を受けるのか受けないのか」「どうやって対応すればいいのか」といったお悩みを解決する一助になればと公開しました。

ここ数か月、偽造マイナンバーカードのニュースがあり、その悪用を防ぐためオンラインでの IC チップ読取一本化の方針や、対面での携帯電話契約による IC チップ読取義務化の方針が発表されています。デジタル庁よりマイナンバーカードの IC チップを読み取るための確認アプリがリリースされ、 2024 年 7 月 23 日の会見 で当時の河野大臣が「より厳格に本人確認するためにマイナンバーカードの IC チップ読取を推進することとした」と発言されたりと、「IC チップ読取」という単語を非常に多く目にするようになっています。

目検での偽造確認に限界があることは事実であり、事業者様のサービスをご利用のお客様へ安心・安全な本人確認手法を提供するため IC チップ読取が大きく価値を生むことは間違いありません。今後のマイナ免許証で IC チップ読取が必要になることも見据え、これまで目検を主たる方法として採用されていた事業者においても、IC チップ読取をご検討される良いタイミングになるのではないかと思います。

サイバートラストの iTrust 本人確認サービスは、マイナンバーカードだけでなく従来の運転免許証や在留カードの IC チップ読取および署名検証に対応しているため、複数の IC カードに対して一括で対応することが可能です。今後ますます重要度が高まる IC チップ読取について、まずは情報収集としてお気軽に お問い合わせ ください。

この記事の著者
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金子 大輔

2012 年サイバートラスト入社。PKI 商材の技術サポート、品質保証に従事し、2020 年より iTrust 本人確認サービスのプロダクトマネージャー兼プロジェクトマネージャーを担当。2022 年よりトラストサービスを統括するトラストサービスマネジメント部部長に就任。米国 PMI 認定 PMP / 加国 IIBA 認定 CBAP。

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