21 新卒の RubyWorld Conference 2021 講演&参加レポート
みなさま、こんにちは。
松江ラボ所属、21 新卒の O.S です。
この度、ご縁がありまして RubyWorld Conference 2021 で講演させていただきました。
今回は、RubyWorld Conference 2021 に参加した感想をお伝えします。
RubyWorld Conference とは?
RubyWorld Conference は、島根県松江市で行われるプログラミング言語「Ruby」の国内最大のビジネスカンファレンスです。
毎年、Ruby の最新技術動向や、ユーザ視点での導入事例、教育分野や研究分野での取り組みが紹介されています。
2009 年に島根県松江市にあるくにびきメッセで初開催されてから、2021 年で 12 回目の開催となりました。
RubyWorld Conference 2021 は、2021 年 12 月 16 日(木)にオンライン形式で開催されました。各講演は YouTube でライブ配信され、参加者同士の交流はバーチャルイベント会場「GALIMO」で行われました。
各講演については YouTube にアーカイブが残っていますので、以下の URL からご覧いただけます。
- プログラム一覧
- アーカイブ(日本語版) RubyWorld Conference 2021 日本語チャンネル (YouTube)
- アーカイブ(英語版) RubyWorld Conference 2021 English Channel (YouTube)
ちなみに、世界で一番最初に行われた Ruby のカンファレンスは、2001 年にアメリカのフロリダ州にあるホテルの会議室で行われたそうです。(まつもとゆきひろ様の基調講演より)
講演概要
「機能検査用自動化ツール『SmrAI』の開発~製造業のプログラミング人材増加に向けた Smaluby の新たな活用方法~」というタイトルで、松江工業高等専門学校 情報工学科 杉山准教授と共同講演をさせていただきました。
https://2021.rubyworld-conf.org/ja/program/session-3/
私は、松江高専 5 年次の卒業研究で、製造業のプログラミング人材育成を目的として、製品の機能検査を自動化するビジュアルプログラミングツール「SmrAI(シンライ)」を松江市 Ruby コミュニティと共同開発しました。SmrAI は、命令ブロックと Ruby プログラムの相互変換機能を持つ「Smalruby」というビジュアルプログラミングツールがベースとなっています。
製造業の品質管理の現場では、品質保証の強化や業務効率化のために、自社で作成したプログラムによる機能検査の自動化を進めています。しかし、プログラムを自社で作成しなければならないゆえに社内のプログラム開発者の育成に課題を抱えている企業も多いのが現状です。この問題に対して、松江高専と松江市 Ruby コミュニティが協力して開発した「SmrAI」は、社内のプログラミング未経験者からプログラミング人材を増やす可能性を示しました。
この講演では、着想に至った経緯として松江高専と地域 Ruby コミュニティとの連携に触れたり、SmrAI の仕様や島根県内の製造現場で行った SmrAI の実証実験の成果についてご紹介させていただきました。また、この実証実験の結果を通じて、「なぜプログラミング未経験でも現場で求められるレベルのプログラムが書けたのか」私なりの考えをお話ししたり、SmrAI の将来展望についてもお話しています。
ご興味がありましたら、是非 YouTube のアーカイブ(時間 3:34:50~4:07:15)をご覧いただけると嬉しいです。
気になった講演
RubyWorld Conference 当日は、仕事の合間にいくつか興味がある講演を聴講することができました!
基調講演 -1 Vision,Value,Victory( 一般財団法人 Ruby アソシエーション:まつもとゆきひろ )
https://2021.rubyworld-conf.org/ja/program/keynote-1/
プログラミング言語「Ruby」の開発者であるまつもとゆきひろさんが、Ruby の「Vision」「Value」「Victory」についてお話されていました。
まつもとさんは Ruby の「Vision」「Value」「Victory」について以下のように考えておられました。
- 「Vision」=Better World by Great Language(素晴らしい言語でより良い世界を)そして、素晴らしい言語にするために、ツールの充実とパフォーマンスの向上に取り組む
- 「Value」=Shopify,SmartHR などの Ruby を利用して開発されたサービスを通じて、非プログラマーにも価値を提供出来ていること
- 「Victory」=コミュニティが前に進み続けて、Ruby が世界に価値を提供し続けていること
まつもとさんは、自身がコミッターだった cmail というソフトウェアの開発コミュニティが、活発に活動しなくなったことで衰退したのを目の当たりにしたそうです。
この経験から、コミュニティはその周りを取り巻く環境に適応しながら常に進化しつづける必要があることを学びました。
まつもとさんは、Ruby がこれからも進化を続けるための具体的なビジョンとして、ツールの充実とパフォーマンスの向上を目指すそうです。
Session-1 Ruby, mruby/c を利用した IoT ソリューション『WaKaYo』の開発事例紹介(株式会社テクノプロジェクト:林佑弥、株式会社トラストソフトウェア:竹内信人)
https://2021.rubyworld-conf.org/ja/program/session-1/
「WaKaYo」は Ruby、mruby/c を用いて開発された CO2 濃度計です。
WaKaYo の開発には、株式会社テクノプロジェクト、松江工業高等専門学校、しまねソフト研究開発センターによる、様々なセンサーを利用した室内環境の見える化を行う共同研究の成果がベースになったそうです。
新型コロナウイルス感染症が流行し始め、三密回避や換気の重要性が謳われるようになったことをきっかけに、この共同研究の成果を世に役立てるため形にしたものが「WaKaYo」であるとのことでした。
コロナ対策は早急の課題であるにも関わらず新たにデバイス開発、Web アプリ開発を行う必要があり、効率的に開発出来る Ruby を選択されたようです。
IoT デバイス側は PIC32 マイコンを採用して mruby/c でソフトウェアを開発、サーバサイド側は Ruby、Ruby on Rails を利用して収集データを表示する Web アプリを開発していました。
mruby/c は、プログラム実行時のメモリ消費量が少なく、小規模マイコンへの組み込みが主な用途になっている軽量な Ruby です。Ruby と同じような文法でプログラムが書けるため、今まで組み込みプログラムで使われていた C 言語と比べると、より簡潔に文量も少なく書けることがメリットとして挙げられていました。
島根県松江市では、民間企業、行政、教育機関が連携して Ruby を活用する研究が積極的に行われていますが、そこでの研究成果が「WaKaYo」という形で世に貢献出来ていることがとても素晴らしいなと感動しました。
Session-4 ラストフロンティア「アフリカ」での Ruby エンジニア育成(株式会社 DIVE INTO CODE:野呂浩良)
https://2021.rubyworld-conf.org/ja/program/session-4/
日本の IT 人材不足とアフリカの失業率が高いという課題を国境を超えたプログラミングスクールによって解決を目指しているというお話でした。
日本は今後人口が減少していく中で、DX を活用して少人数でも効率的に業務を出来るようにする流れがあります。その流れもあり、IT を学びたいという人は多いですが、IT を教える側の人材が不足しているという課題があります。
アフリカでは若者の失業率が高く、職業訓練へのアクセスも悪いという課題があります。
この双方の課題を解決するために、機械翻訳ツールを使って言語の壁を越え、アフリカ人のメンターから教わることが出来るプログラミングスクールの運営に取り組まれています。
もともと、野呂さんは 2017 年からルワンダ共和国にて英語で Ruby を教え続けておられ、ルワンダでの卒業生を輩出してメンターとして自社に採用している実績があるそうです。
この経験を生かしてプログラミングスクールを運営することで、アフリカにはメンターという雇用機会を創出し、日本では IT 人材不足をカバーしながら IT を学ぶ機会を創出しておられました。
日本とアフリカの課題を解決するだけではなく、IT を教えたり学んだりしていくなかで国際交流も出来るところがとても良いところだなと感じました。
このプログラミングスクールが日本とアフリカを繋ぐ架け橋にもなりうると感じました。
カンファレンス後の楽しみ、オンラインレセプション
カンファレンスといえば、終了後に参加者の皆さんで集まってお話をする慰労会 (?) も楽しみの 1 つだと思います。
今年は、新型コロナウイルス感染症対策のため、バーチャルイベント会場の「GALIMO」で行いました。オンライン開催となりましたが、講演者の皆様や松江市の IT 振興に携わっている職員の皆様と会話ができて、私自身とても良い刺激になりました。
オンサイトであればもっと多くの方と話したり、おいしいご飯も食べられると思うので、是非来年の RubyWorld Conference はオンサイトで出来ると良いなと感じました(^^)
まとめ
今回、RubyWorld Conference 2021 で講演したことは私自身とても大きな経験になりました。また、他のスピーカーの皆様の講演を聴くことで新しい取り組みを知ることが出来たり、自分が知らないことを学ぶことも出来ました。なにより、カンファレンスを通して初めてお会いする方と繋がりを持てたことも嬉しかったです。
今後も RubyWorld Conference は続いていくと思うので、積極的に参加していこうと思います。
重ねてになりますが、RubyWorld Conference 2021 は YouTube にアーカイブが残っていますので、ご興味がありましたら是非アーカイブをご覧ください!!
ここまで読んでいただきありがとうございました!!